熱中症というと、炎天下の運動中や屋外の作業中を思い浮かべます。ところが救急搬送された人の発生場所を見ると、住居がかなりの割合を占めます。動いていない、日差しも浴びていない、それでも起きるのはなぜか。屋内で条件がそろう仕組みと、室温・水分・体調の3点からの備えを整理します。
家の中で条件がそろう理由
熱中症は、体にたまった熱を外へ逃がしきれなくなったときに起こります。人の体は汗をかいて気化させることで熱を捨てますが、この仕組みは湿度が高いと働きません。汗が蒸発せず、流れ落ちるだけになるからです。
屋内が危険になるのはここです。窓を閉め切った部屋は湿度が上がりやすく、気温がそれほど高くなくても熱が逃げなくなります。加えて、日中に壁や屋根にたまった熱は、日が落ちてからじわじわと室内へ移ってきます。夕方から夜にかけて室温が下がらないのはこのためで、就寝中に起きる熱中症の背景にもなっています。
気温だけでは判断できない
天気予報の気温は屋外の日陰で測った値で、自分の部屋の状態とは一致しません。判断に使うなら、部屋に温湿度計を1つ置いて、実際の数字を見るのが確実です。暑さの危険度を気温・湿度・輻射熱の3つから示す指標として暑さ指数(WBGT)があり、地域ごとの数値と警戒情報は環境省の熱中症予防情報サイトで公開されています。外出の可否を決めるときはこちらを見ます。
室温 — 我慢のためのエアコンは使わない
屋内の熱中症で繰り返し指摘されるのが、エアコンがあるのに使っていなかったという状況です。電気代が気になる、冷えすぎるのが苦手、まだ大丈夫だと思った。どれも理解できる理由ですが、体温の調節が追いつかなくなってからでは自覚のないまま進みます。
目安として、室温はおおむね28度を超えないように保つよう案内されています。設定温度を28度にするという意味ではなく、実際の室温が28度に収まるように運転するという意味です。同じ設定でも部屋の広さや日当たりで到達する温度は変わるため、ここでも温湿度計の実測を基準にします。
冷房が苦手な場合は、温度を下げるより湿度を下げるほうが体感が変わります。除湿を併用し、扇風機やサーキュレーターで空気を動かすと、設定温度を下げなくても汗が蒸発しやすくなります。電気代が気になる場合の考え方は電気代を押し上げる5つのムダにまとめていますが、真夏のエアコンは削る対象ではなく、削るべきは待機電力や使っていない部屋の照明のほうです。
夜間の対策
就寝中は暑さに気づけません。タイマーで途中に切れる設定にすると、その後に室温が上がって明け方に条件がそろいます。夜通し弱めに運転させておくほうが安全です。寝室の環境をどう整えるかは睡眠の質を左右する7つの習慣でも触れていますが、夏は体温を下げられるかどうかが寝つきにも直結します。
水分 — 喉が渇く前に、こまめに
喉の渇きは、体の水分が減り始めてから遅れて出てくる感覚です。渇きを合図にすると、すでに不足しています。時間を決めて少しずつ飲むほうが確実で、起床時・食事のたび・入浴の前後・就寝前といった場面に結びつけると忘れません。
汗を多くかいたときは、水だけでなく塩分も一緒に失われています。水分だけを大量に補うと血液中の塩分濃度が下がり、かえって具合が悪くなることがあります。大量に汗をかいた日は、経口補水液やスポーツドリンク、あるいは食事で塩分を取ります。
飲み物の選び方
コーヒー・緑茶・ビールなどは利尿作用があり、飲んだ量がそのまま体に残るわけではありません。水分補給の主役には向かないと考えて、水や麦茶を基本に置きます。カフェインの扱いは睡眠にも関わるため、夕方以降は特に量を意識したいところです。
体調 — 起きやすい条件を知っておく
同じ環境にいても、熱中症になりやすい条件があります。
- 高齢者 — 暑さと渇きを感じにくくなり、体内の水分量も減っている
- 乳幼児 — 体温調節の機能が未熟で、地面に近いぶん照り返しの影響も受けやすい
- 睡眠不足・二日酔い・下痢のあと — 体の水分が減っている、または調節機能が落ちている
- 暑くなり始めの時期 — 体がまだ暑さに慣れていない
- 持病があり、水分や塩分の制限を受けている人 — 自己判断で増やさず主治医に確認する
高齢の家族が離れて暮らしている場合、本人が「暑くない」と言っていても室温は別問題です。電話のついでに温度計の数字を聞く、エアコンをつけているか確認する、といった声かけが有効です。
疑ったときの対応
めまい、立ちくらみ、こむら返り、大量の汗、頭痛、吐き気。これらが出たら、まず涼しい場所へ移り、衣服をゆるめ、首・わきの下・脚の付け根を冷やします。水分と塩分が自分で取れる状態なら取らせます。
自分で水が飲めない、呼びかけへの反応がおかしい、まっすぐ歩けない。このいずれかがあれば、その場で救急車を呼ぶ段階です。無理に飲ませると誤って気管に入るため、飲ませようとしないでください。判断に迷う場合の症状の見方は厚生労働省が公開している熱中症の情報にまとまっています。
まとめ
屋内の熱中症は、湿度が高くて熱が逃げないこと、日が落ちても室温が下がらないこと、そして本人が気づかないことの3つが重なって起こります。温湿度計を置いて室温28度を目安に保つ、喉が渇く前に時間で区切って飲む、汗を多くかいた日は塩分も取る。高齢者と乳幼児は感覚に頼れないので、周りが数字で見る。この3点で、家の中の条件はかなり崩せます。





