靴は、履いている時間より、しまわれている時間のほうが長いものです。傷みの多くはその保管中に進みます。原因はほぼ一つで、湿気です。脱いだあとの1分をどう使うかで、同じ靴が2年もつか5年もつかが変わります。
脱いだ直後にやること
足からは1日でコップ1杯ほどの汗が出るとされています。その水分は靴の内側に残ります。帰宅してすぐ下駄箱にしまうと、湿った状態のまま閉じ込めることになり、においとカビの原因になります。
やることは単純です。玄関の隅で、そのまま半日から1日置く。それだけで内部の水分がかなり抜けます。中敷きが外せるタイプなら外して立てかけ、靴ひもは緩めて口を開けておくと、乾きが早くなります。
- 脱いだらすぐしまわない。最低でも数時間は外気に触れさせる
- 靴ひもを緩め、ベロを起こして口を広げる
- 中敷きは外して別に乾かす
- 濡れた日は、新聞紙を丸めて詰める。1〜2時間で交換する
雨に濡れた日の手順
びしょ濡れになった靴を、ドライヤーやストーブで乾かすのは避けます。革は縮んで硬くなり、接着剤も傷みます。正しいのは、表面の泥をふき取り、新聞紙を詰めて風通しのいい場所に置くという地味な方法です。新聞紙は湿ったら取り替えます。一度で乾かそうとせず、2日かけるつもりでいるほうが結果的にきれいに戻ります。
ローテーションが最大の手入れ
手入れの道具をそろえるより効くのが、同じ靴を毎日履かないことです。1日履いた靴は、完全に乾くまで1日以上かかります。2足を交互に履くだけで、乾く時間が確保され、型崩れも進みにくくなります。
3足あればさらに余裕が出ます。高い靴を1足買うより、同じ予算で2足そろえて交互に履くほうが、結果として長く使えるという考え方もあります。
収納は詰め込まない
下駄箱に隙間なく並べると、空気が動かず湿気がこもります。1足ずつ指1本分ほど間隔を空ける、棚板の奥にすき間を残す、扉をときどき開けておく。これだけで、においの出方が変わります。
除湿剤を置くなら、下段が効きます。湿気は下にたまるためです。あわせて、下駄箱の中を年に1〜2回は空にして、ほこりを払い、乾いた布でふいておくと、カビの発生を抑えられます。
長く履かない靴のしまい方
季節ものの靴を半年しまうときは、しまう前に必ず一度乾かし、汚れを落とします。汚れたまま箱に入れると、そこからカビます。箱にしまうなら、乾燥剤を一つ入れ、密閉しすぎないようにします。ふたに小さな穴を開けておく方法もあります。衣類の入れ替えと同じ週にまとめると忘れません。手順は衣替えを1日で終わらせる手順と同じ考え方です。
素材で変わる部分
革靴は、乾かしたあとにクリームで油分を足します。頻度は月に1回程度で十分で、履くたびに塗る必要はありません。塗る前にブラシでほこりを落とすこと、塗ったあとに乾いた布で余分をふき取ることの2つを守れば、道具は最低限で足ります。
スニーカーは、丸洗いできるものが多い一方で、洗いすぎると接着部分が弱ります。汚れたところだけ部分的に洗い、全体を洗うのは数か月に1回にとどめるほうが長持ちします。洗ったあとは、直射日光を避けて陰干しします。
スエードなど起毛素材は、水と油に弱いので、濡らさずに専用のブラシで汚れを払います。防水スプレーは、履く前と、雨に濡れたあとの乾燥後にかけると効きます。
においが出てしまったとき
すでににおいが付いてしまった靴は、乾かすだけでは戻りません。においの元は靴の中で増えた菌なので、まず中を洗うか、除菌できるスプレーを使います。そのうえで、完全に乾かすまで履かないことが条件になります。半乾きで履くと、同じことの繰り返しになります。
中敷きを新しいものに替えるのも効きます。においの多くは中敷きに染み込んでいるため、そこを交換するだけで大きく変わることがあります。数百円で買えるので、洗うより早い場合もあります。
買うときに見ておく点
手入れのしやすさは、買う段階である程度決まります。中敷きが取り外せるか、ひもで甲の締め方を調整できるか、洗える素材か。この3つに当てはまるものは、あとから扱いが楽になります。
サイズも湿気に関係します。きつい靴は足が蒸れやすく、大きすぎる靴は中で足が動いて型崩れが早まります。夕方は足がむくむため、試着は夕方に行くほうが実際の履き心地に近くなります。
玄関の湿気そのものを減らす
靴だけを気にしても、玄関自体が湿っていれば効果は限られます。玄関は北向きで窓がないことが多く、家の中でも湿気がたまりやすい場所です。日に一度、数分だけ扉を開けて風を通す、あるいは換気扇があれば回す。それだけで下駄箱の中の状態が変わります。
傘立ても見落としやすい湿気の元です。濡れた傘をそのまま立てておくと、水が床にたまり、玄関全体の湿度を上げます。使ったあとは外で水を切る、玄関の外に干す場所を作るといった手当てが、結局は靴の寿命に効いてきます。
まとめ
靴の寿命を決めるのは、磨く回数ではなく乾かす時間です。脱いだらすぐしまわない、毎日同じ靴を履かない、詰め込んで収納しない。この3つだけで、手入れの道具を増やさなくても持ちは変わります。玄関に1足分の置き場所を空けておくところから始められます。





